エアコンの除湿機能をものともせず、
扇風機が送り出す微風にも負けず、
ベッドの上に停滞する熱帯夜。
セミダブルのマットの上に36℃が二つ横たわればそれだけで暑苦しいというのに、
なぜか絡み付いてくる腕と足。
規則正しく首筋に吹きつけられる呼気は、
すでに冷たいのか生ぬるいのかすら分からない。
しかし人間とは順応する生き物。
そんな過酷な状況の中、
ようやくまどろみかけた私の意識が急速に現実へ引き戻された。
「いたっ!」
肩に走る激痛。
振り返ると黒い毛玉が視界を覆いつくした。
「……何やってるの?」
「咬んでるの」
むき出しの肩に歯をたてたまま、くぐもった声でハニーが答えた。
「何で?」
「眠れないから」
「……」
除湿機能を冷房に切り替えてハニーの頭を叩くように撫でる。
「おやすみ」
「……」
「………………いってっ!」
再び肩に走る激痛。
「何するの!」
「だから咬んでるんだってば」
「だからなんで」
「だから眠れないから」
「もう知らないっ!」
ハニーを振りほどき冷えた壁に寄り添うべく寝返りをうつ。
ごっ。
思いのほか近くだった壁に額をぶつけた。
「痛い……」
「あははははは!」
「ちょっ、笑うってひどくない?」
「はいはい。お隣に迷惑だからこっち向こうね~」
再び無理やりハニーの腕の中へ閉じ込められる。
「あー、痛い。青くなったらどうしよう」
「壁にぶつけましたって言ったら?」
「言えるか! って、なんでまた咬んでんの!?」
「いや、おでこの痛いの忘れるかなーと思って」
「ダブルで痛いわ!」
「そっか。じゃあもういいね」
「何が? 何がいいの!?」
咬みつこうとするハニーの頭を右手で押し返し、
二人の間に入れようと引き寄せた枕をハニーに投げ捨てられ、
布団の中へ逃げるものの布団を剥ぎ取られ、
足の裏をくすぐろうと手を伸ばしそれを阻止しようと脇をくすぐられ、
いいかげん近所迷惑な不毛な戦いに自分自身あきれつつ、
強すぎる朝の光と軽快すぎるアラーム音の中目が覚めた。
額に青あざは無かったが、
右肩にくっきりと浮かび上がる青紫にそっとため息をつく。
犯人は壁に寄り添って心地良さそうに寝ている。
扇風機が送り出す微風にも負けず、
ベッドの上に停滞する熱帯夜。
セミダブルのマットの上に36℃が二つ横たわればそれだけで暑苦しいというのに、
なぜか絡み付いてくる腕と足。
規則正しく首筋に吹きつけられる呼気は、
すでに冷たいのか生ぬるいのかすら分からない。
しかし人間とは順応する生き物。
そんな過酷な状況の中、
ようやくまどろみかけた私の意識が急速に現実へ引き戻された。
「いたっ!」
肩に走る激痛。
振り返ると黒い毛玉が視界を覆いつくした。
「……何やってるの?」
「咬んでるの」
むき出しの肩に歯をたてたまま、くぐもった声でハニーが答えた。
「何で?」
「眠れないから」
「……」
除湿機能を冷房に切り替えてハニーの頭を叩くように撫でる。
「おやすみ」
「……」
「………………いってっ!」
再び肩に走る激痛。
「何するの!」
「だから咬んでるんだってば」
「だからなんで」
「だから眠れないから」
「もう知らないっ!」
ハニーを振りほどき冷えた壁に寄り添うべく寝返りをうつ。
ごっ。
思いのほか近くだった壁に額をぶつけた。
「痛い……」
「あははははは!」
「ちょっ、笑うってひどくない?」
「はいはい。お隣に迷惑だからこっち向こうね~」
再び無理やりハニーの腕の中へ閉じ込められる。
「あー、痛い。青くなったらどうしよう」
「壁にぶつけましたって言ったら?」
「言えるか! って、なんでまた咬んでんの!?」
「いや、おでこの痛いの忘れるかなーと思って」
「ダブルで痛いわ!」
「そっか。じゃあもういいね」
「何が? 何がいいの!?」
咬みつこうとするハニーの頭を右手で押し返し、
二人の間に入れようと引き寄せた枕をハニーに投げ捨てられ、
布団の中へ逃げるものの布団を剥ぎ取られ、
足の裏をくすぐろうと手を伸ばしそれを阻止しようと脇をくすぐられ、
いいかげん近所迷惑な不毛な戦いに自分自身あきれつつ、
強すぎる朝の光と軽快すぎるアラーム音の中目が覚めた。
額に青あざは無かったが、
右肩にくっきりと浮かび上がる青紫にそっとため息をつく。
犯人は壁に寄り添って心地良さそうに寝ている。
2010/08/02(月) 12:11:35 | ハニー |
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